基礎・臨床研究
basic & clinical research

研究内容の紹介
introduction of research contents
TOPページ > 基礎・臨床研究 > 敗血症・多臓器不全の病態解明、治療開発

敗血症・多臓器不全の病態解明、治療開発

 ・腸管は全身侵襲に対し脆弱な器官の一つです。腸管は栄養を吸収する役割を担っているだけではありません。腸管には腸内細菌叢が発達しており、これらの腸内細菌叢と呼応しながら、全身免疫系を安定化させていることが分かってきています。また、腸管からは様々なホルモンを分泌しており、全身代謝にも寄与しています。集中治療を要する全身侵襲下において、腸管虚血および、腸管機能不全が、全身のホメオスターシス破綻に深く関与していると考えられます。ラビットにLPS(エンドトキシン)を投与する敗血症モデルを用いて、腸管局所の血流の評価を行っています。また、我々は、全身侵襲下においてなぜ腸管上皮が再生しにくくなるのか、どうしたら上皮としての機能を維持することができるのか、腸管機能不全がどう全身免疫系や代謝の破綻に関与するのか、という課題に立ち向かっています。救命センターにおけるシンバイオティックス治療の成果を含め、新たな全身侵襲に対する腸管保護療法の開発を、基礎実験の側面からも進めていきます。

 ・多発重症外傷及び敗血症に引き続く多臓器不全に対し、全身性炎症反応(SIRS)をいかに効率よく抑制し、荒廃した臓器を再建していくかが、重要かつ急務を要する課題となっています。我々は、これを克服するために細胞移植治療を応用しようとしています。
 細胞移植治療は、今までに心筋梗塞、脳梗塞、脊髄損傷等に対し開発され、実際に臨床応用が始まっています。移植に用いる細胞は骨髄間質細胞、血管内皮前駆細胞、神経幹細胞等、目的に応じて使用されています。移植された細胞は、障害を受け脱落した組織を構成する細胞へと分化するだけでなく、組織保護的に働く分泌性因子を放出し、組織保護作用を発揮するとともに、抗炎症作用も有しているようです。
 我々は、ラットの敗血症・多臓器不全モデルに対して骨髄間質細胞を経静脈的に投与すると、生存率が改善すること、全身性の炎症を著明に抑制することを示しています。今後、そのメカニズムを明らかにするとともに、実際の臨床応用が可能となるように工夫していきます。

前ページへ戻る