現在実施中の研究

現在実施中の研究

スポーツ脳震盪における唾液中のバイオマーカー解析研究

1.【研究題目】
スポーツ脳震盪における唾液中のバイオマーカー解析研究

2.【研究機関および研究責任者】
研究機関:大阪大学大学院医学系研究科救急医学/高度救命救急センター
研究責任者:中村洋平 (大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 特任助教)

この研究は、大阪大学医学部附属病院の倫理審査委員会で倫理的観点および科学的観点から妥当性についての審査を受け、病院長が許可した上で実施しています。

3.【研究の背景と目的】
スポーツ外傷で生じる脳震盪の診断は、ケガをした際の状況や本人の訴える症状、医学的な神経診察の所見などに基づいて行われています。一方で、頭部の外傷において一般的に行われるCT検査では異常な所見を認めません。つまり、脳震盪を簡便かつ高い精度で診断できる指標は確立されていないと言えます。
脳震盪から回復していない状態のまま、再度頭部に打撃を受けると、稀に命にかかわる頭部の外傷を生じることが知られており、セカンドインパクト症候群と呼ばれています。さらに、脳震盪を繰り返し生じることで、脳への後遺症を生じる可能性が示唆されており、慢性外傷性脳症という医学的な概念も確立されてきていいます。
脳震盪に伴うこのようなリスクを回避するためにも、脳震盪の正確な診断や、選手が安全に競技復帰することは非常に重要なことです。
近年、唾液中のRNAと呼ばれるバイオマーカーが、脳震盪の診断に有用である可能性が海外から報告され注目を集めています。一方で、このようなバイオマーカーは人種差や性別差、年齢による違いがあるとされ、日本の学生スポーツ領域で、研究を進めることも重要と考えられます。
今回、スポーツ脳震盪の予防や競技復帰に関して、日本のトップランナーである関西学院大学アメリカンフットボール部ファイターズの皆様にご協力頂き、研究を行なっております。
本研究では、日本人の学生アメリカンフットボール選手の唾液を解析することで、脳震盪と関連するバイオマーカーを検索し、脳震盪の診断の精度向上や選手の競技復帰のサポートに繋がる新たな手法の確立を目的としています。

4.【研究の方法】
本研究で以下の①~③のタイミングで、選手の皆さんから唾液を採取させて頂きます。

①研究の主旨に同意頂いた2-4年生の選手を対象に、2022年4-5月に脳震盪受傷前のコントロール検体として唾液を約1ml採取しました。
②練習もしくは試合中に脳震盪を受傷した時にも同様に、唾液を約1ml採取します。
③最終的に脳震盪と診断された場合、症状が消失し競技に復帰する時点での唾液についても約1ml採取します。

これら①~③の唾液検体を大阪大学の研究室で解析を行います。具体的には、脳震盪を生じる前の検体①と、脳震盪を生じた時点の検体②、さらに脳震盪から回復した時点の検体③に発現しているバイオマーカー(今回はRNAや蛋白)を抽出し、3つの検体間での発現パターンの違いを評価します。
これにより、脳震盪を生じた時や脳震盪から回復した時の指標となるバイオマーカーを見つけ出そうというものです。

5.【研究の期間】
唾液の採取は2022年4月~開始しております。
その後、唾液の解析を行い、2023年度内に研究結果の報告を行う予定です。

6.【研究にあたっての利益および不利益】
本研究に参加は自由意思です。大阪大学やファイターズから研究への参加を強制することはありません。また、研究に参加されない場合も、何ら不利益はありません。さらに、いったん研究に参加された後も、いつでも同意を撤回することが出来ます。途中で、同意を撤回した場合も、何ら不利益はありません。
本研究に参加された場合、あなた自身に直接の利益をもたらす可能性は非常に低いものです。しかし、研究の成果は今後のスポーツ医学や頭部外傷の診断・治療の発展に寄与し、脳震盪の診断や治療をより効果的に行えるようになると考えられます。

7.【個人情報の取り扱い】
すべての個人情報については、法律や倫理指針に基づき、情報保護とプライバシー尊重の原則を遵守致します。
研究に際しては、氏名や生年月日、住所といった個人情報は必要がありませんので、代わりに選手のみなさんと唾液検体を結びつける番号を用います。このようにすることにより、選手のみなさんの個人情報は、解析を行う研究者にも知らされること無く保護されます。

8.【研究終了後の情報、検体の取り扱い】
研究により得られた情報は、研究修了報告日から5年又は研究結果最終公表日から3年又は論文発表から10年のいずれか遅い日まで保管され、適切に廃棄します。保管した情報で新たな研究を行うことがありますが、その場合は新たな研究計画書を倫理審査委員会において承認を受けた上で利用します。
採取した唾液の検体は研究施設内において、バイオハザード(生物学的危険物)の処理に準じた廃棄を行います。

9.【研究成果の公表】
本研究の方法や目的、研究成果は個人が特定されない形で論文や学会に公表されます。

10.【研究資金と利益相反】
この研究の資金は、公的機関からの資金(科研費等)と一部企業からの研究助成を受けています。研究に際しては、倫理委員会への研究申請書において利益相反を申告し、臨床研究倫理審査委員会での承認を得ています。

11.【その他】
この研究へのご質問等は、下記のお問い合わせ先へお尋ね下さい。

〈お問い合わせ先〉
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター/大阪大学大学院医学系研究科 救急医学
特任助教 中村洋平
住所 大阪府吹田市山田丘2番15号
電話 06-6879-5707 (高度救命救急センター 医局)
mail; y.nakamura@hp-emerg.med.osaka-u.ac.jp

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