病院職員に対する「胸骨圧迫のみ心肺蘇生法」の教育効果
病院内は基礎疾患を持つ患者が多く集まるところであり、突然死あるいは急変が発生する可能性がある場所として、危機管理が求められます。病院外で心停止が発生した場合、直ちに居合わせた市民により迅速な心肺蘇生法(Bystander-initiated cardiopulmonary resuscitation: バイスタンダーCPR)が、行われると心停止患者の救命率を2~3倍にすることができると言われています。また、心室細動(ventricular fibrillation: VF)症例においては自動体外式除細動器(Automated external defibrillator: AED)を用いた早期除細動が救命の鍵であり、除細動が1分遅れるごとにその救命率は10%低下し、バイスタンダーCPRが行われると救命率の低下を1分間あたり3~4%程度に抑えることができるとされています。近年、「胸骨圧迫のみの蘇生法でも、人工呼吸を行う心肺蘇生と同等あるいはそれ以上の効果がある」、「胸骨圧迫のみの簡単な蘇生法であれば、救命に参加しようとする人が増えることが期待できる」などの報告をもとに、短い時間で「人工呼吸の手法を省いた胸骨圧迫とAEDの使い方に特化した心肺蘇生法」を体験できるコースが開催されており、アメリカ心臓協会は、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法実施を促す声明を出しています。
そこで当院でも救命センタースタッフが中心となり、急変患者の第1発見者となり得る病院職員に対し、胸骨圧迫とAEDの使用法に特化した簡易型心肺蘇生講習会(約45分間)を定期的に開催しています。また、講習会前後での救命に対する意識調査や胸骨圧迫手技の客観的評価を行い、その教育効果を研究しています。